今では考えられないことだが、近所の川には普通に生活排水が流れていた。
少し上流のほうに屠畜場(当時は屠殺場といった)があって、その血までもが川に流されていた。
近所の小川もドブ溝も川も一度に赤くなり、今考えれば地獄のような風景が広がっていたものだが、そこは子供の柔軟性というか、ロンが生まれ持った業でもあろう。漫画のようなドラマチックな光景に寧ろ歓喜までもをしたものだ。
ある日、仲間達との冒険を企てた。
恐ろしいことを考えるものである。
『この血はどこからやってくるのだろう』
あろうことか我々子供達の軍団は、血の川に入り飛沫をあびながら上流への行進を行った。足は素足だった。
さて冒険を終え、現実そのものを観察する子供達だったが、そこで少し不思議な光景を目にする。
屠畜場から流れ出る排水が川に落ちる場所に、何匹もの河童がいるのである。
まぁ河童というのは後付けの解釈なのだが、柴犬位あるカエルのようなものが何体も、心地良さそうに鮮血を浴びていたのだ。
小さな目があくと赤い目がキロキロと光っていた。
『河童!!』
一人が大声をあげた。
血河童達は一斉に川に潜ってしまうと、ザザザと泳ぎ散ってしまった。
あれは何だったのだろうか。
今は染まることのない平穏な川を見ると、子供の頃に見た不思議が思い出される。
思えば血河童からみれば、血塗れのこちらが化け物だったのかも知れぬ。
屠畜場も公園になってしまったな。
